桂文珍の『さんまの名探偵』噺

桂文珍『落語的学問のすすめ』より

 そのファミコンの種類もいろいろ出まして、「さんまの名探偵」ちゅうソフトまでできたんでございますが、あれには参りましたねえ。いきなり、私「桂文珍」がイラストでばーっと出てくるんですよ。セットしてみると、顔ぱーっと映るんです。そやから「やったあ、僕もいよいよファミコンになったあ」と思うてすごい喜んだら、その途端に「ギャー!」て、これで終わりなんです。私がいきなり殺されているんですね。(笑)
 ほいで、さんま君が名探偵になりましてね、犯人を捜せちゅうわけなんです。私、もう「何や、それ。何するねん」て、こう思いまして。そいですぐ吉本へ「そんなもん、わしゃ聞いとらんでえ」と文句をいいに行ったわけなんですね。肖像権いうのがありますから。私が黙ってたら、吉本いうのは知らんかったんやろいうて、その銭ぜんぶ自分らが取ってしまうような、しっかりした会社でございますから(笑)、そこんところはいいにいかないかん。
 ただ、そのときにですね、「銭ちょうだい!」ちゅうなことをいっていくようではいけません。サブロー・シローになってしまいます。(笑)
 ここでいかにうまく世渡り上手になるか、これが肝心なとこですよ。皆さんも社会に出たら、だんだんそのへんの呼吸がわかってくると思いますけども、「すんまへん、あのぉ、わて死んでまんのやけど、香典ちょうだい」て、こういういい方するわけですね。すると、「ああ、そうか。かわいそうになあ。ほな、香典用意しとくわ」ちゅうなことで丸うおさまる。(笑)